事例インタビュー
興味本位で触ったAIを、全社の仕事に。葛飾区のセイズ・及川社長が導入半年で見つけた、経営者がみんなを引っ張っていく進め方

セイズ株式会社(東京都葛飾区)代表取締役 及川達也様(右)とSHO-SANの丹野裕司郎
東京都葛飾区で高性能住宅を手がけるセイズ株式会社は、2030年に100億円企業を目指す住宅会社です。代表取締役の及川達也様は、興味本位でAIを触り始め、講演資料づくりで手応えをつかみました。そして、会社全体でやらないと効果がないと考え、全社でのAI活用を始めています。SHO-SANのAI支援を受け始めて半年弱、「全社員の資料が変わった」と話します。経営者自らがAIを触ることが推進のポイントだと語る及川様に、導入の判断、社内への伝え方、つまずいた失敗、毎日の使い方を伺いました。
- 経営者が先にAIを触る。及川様は興味本位でAIを触り始め、講演資料づくりで手応えをつかみました。会社全体でやらないと効果がないと考え、全社で始めています。社長が理解していないと「何をやってるの」となる、と話します
- AIの前に、会社のゴールを決める。セイズのゴールは2030年に100億円。ゴールがないとAIの使い方がバラバラになるため、費用を気にせず使って試す方針と、最初の3か月でスキルを磨く期間を設けました
- 半年で「全社員の資料が変わった」。一方で、ツールの切り替えが社内に浸透する前に進んだ失敗もありました。及川様は元に戻さず、「やるって決めてるんだからやる」「できないところは改善していこう」と社員に伝えています
AI支援を受け始めて半年弱の変化として、「全社員の資料が変わりました。やっぱりレベルが高いです」と及川社長は話しています
AI活用を全社に広げるにあたり「一人も反対してないんですよ」と話し、全員のスキルを上げようと、まず学ぶところから始めたといいます
講演のたびに移動時間も使って悩みながら作っていた資料が、AIで作り始めてから「楽になっちゃって」と及川社長は話しています
インタビュー動画
葛飾区の高性能住宅会社セイズは、どんな会社なのか。「本物を追求する」理念と2030年100億円の目標
セイズ株式会社は、東京都葛飾区を中心に、長く安心して住める高性能住宅を提供している会社です。理念は「本物を追求する」こと。2030年には、大切にしているものをさらに広めながら、100億円企業を目指しています。代表取締役の及川達也様に、丹野(SHO-SAN)が、AI導入の感想を質問形式で伺いました。
単なる家を作っているだけの会社ではなくて、お客様ご家族の未来を守る、命と財産を守る、というのが定義づけされているんですけど
住宅性能だけでなく、信頼関係と地域とのつながりを
住宅性能だけではなくて、お客様との信頼関係や地域とのつながりを大切にしている会社です
SHO-SANは、2026年2月ごろからセイズのAI支援をしています。聞き手は、朝会で企業理念が語られ、従業員の方と話すと「いい家を建てたい」という気持ちが言葉の節々に表れていて、素敵な会社だと感じたと話します。
住宅会社の社長は、なぜAIを触り始め、会社として取り組むと決めたのか
及川様がAIを触り始めたきっかけは「興味本位」でした。講演資料づくりで手応えをつかみ、会社全体でやらないと効果がないと考えて、全社での取り組みを始めています。

AIの影響を知りたくて本を読み、興味本位で触ってみた
及川様は、AIが自社の事業にどんな影響を及ぼすのかを知るために、SHO-SANと出会う前にいろいろな書籍を読みました。そのうえで、興味本位でChatGPTを触ってみたそうです。
すごく私の想像を超えて、いろんなアイデアが広がって楽しかったんですよ、実際に。遊びで使っていながら、これって仕事に使えるなと思って
セイズでは、プロモーション事業部や若手の設計デザイン事業部が先にAIを使い、社内で共有もしてくれていました。ただ、一般の社員にとってはハードルが高い、と及川様は感じていました。
「会社全体でやらないと、効果がないんじゃないか」。業界の集まりでSHO-SANと出会う
きっかけは、住宅業界の経営者が集まる会でした。SHO-SANが会の会員をサポートする話が出ていた時期です。及川様は、住宅業界が変わっていく中で、自社として具体的に何ができるのかを聞きたくて、SHO-SANの担当者に会いました。
でも私はやっぱり、その会の社長だけじゃなくて、会社全体でやらないと、これって効果がないんじゃないかなと思って
深く事業にしようと思う前に、先に楽しかった
及川様は、AIを触り始めた当時を次のように振り返ります。自分の写真や声で遊ぶうちに、少しずつ仕事にも転用し始めました。深く事業にしようと思うより先に、楽しかったといいます。
だけどやってみて面白い。今もちょっと進化してますけど、当初は本当に興味本位で、いじってて楽しいなと思って
仕事での手応えは、講演資料づくりから
及川様は講演の機会が多く、経営の原理原則は変わらなくても、時代に合わせて変わる部分の資料は、そのたびに作り直す必要があります。移動の時間を使って悩みながら作るため、資料づくりには大きな時間がかかっていました。
その都度、その都度、変化に対応した資料を作らなきゃいけなくて、移動の時間とかも本当に悩みながら作ってるんで、すごく時間使うんですよ
そこで、資料作成に使えるAIツールのGensparkを教わり、自分の資料や考え方を入れていくと、自分が作るように資料ができるようになりました。
私は、一つのプレゼンボードには一つのメッセージしか入れないんですよ
プロンプトで命令をしながら、私の説明しやすい資料を作り始めてから、楽になっちゃって
私は伝えるのが仕事だから、社員に対しても伝えていくのが仕事で
毎週行っているKPIも、AI化することで全員に見えるようになり、これは今も進化中だと及川様は話します。
AI活用を全社員に広げるとき、経営者は何を先に決めるべきか
及川様が先に決めたのは、会社としてのゴールと、費用を気にせず使って試す覚悟でした。ゴールを決めなければ、AIの使い方はバラバラに進んでしまう、と話します。
全社員に使わせる理由は、共通言語をつくること
聞き手が、なぜ全社員に「使え」と号令をかけたのかを尋ねると、及川様はまず、会社は組織だから、と答えました。社長が理解していないと「何をやってるの」となる、とも話します。
会社というのは組織なので、共通言語をAI化していかなきゃいけないので、私だけやっててもダメだし
アカウントが増えても「やりなさい」。今は使って投資する時期
SHO-SANの担当者から、使えるアカウントを増やす提案がありました。最初は「これでいい」としていたものの、社員が使い始めて、それでは収まらなくなったといいます。及川様によると、社員が金額を気にしながら使い、「誰だよこのクレジットを使ったのは」と犯人探しが始まった時もありました。それでも及川様は「やりなさい」と答えました。
私はやりなさいって言ってるんですよ。それはなぜかというと、そこの先には必ずいい未来があるんですよ
そんなのどうでもいいから、もう今は使って投資して、みんなでうちの会社にとって一番何が効果があるのかを探る時だから
AIの前に、会社のゴールを決める
AIの前に、必ず会社でセットアップしなきゃいけないのは、やっぱり目標値。会社としてのゴールを決めない限り、AIは使い方がバラバラに進んでいっちゃうんですよ
うちは2030年に100億企業で、みんなその見えてない景色をみんなで見ようと。あと5年ですよね
聞き手は、及川様が投資をある程度担保して「どんどん使って探ってみなよ」というスタンスを取っていることと、目的を設定していることの2点が、この半年でAIが進んでいる要因だと見ています。
全社員にAI活用を伝えたとき、社内の反応はどうだったか。経営者が先に学ぶ大切さ
及川様によると、AI活用に反対した社員は一人もいませんでした。毎週月曜のメッセージでAIを使う目的を伝え、最初の3か月はスキルを磨く期間にして、そのあと各事業部の実務に広げていきました。
毎週月曜のメッセージで、AIを使う目的を伝える
うちって私が月曜日に必ずメッセージする時間があるんですよ。それでこのAIを使う目的をしっかりメンバーに周知しながら
及川様は、支援が始まる前から自分でAIを触りながら、そのすごさを感じていました。そのうえで「まずみんなで学んでいこう、全員のスキルを上げよう」と決めています。SHO-SAN代表の髙谷と、SHO-SANの担当者が直接会社に出向してくれる話を進め、「こんなにありがたいことはない」と感じて、「みんなやるぞ」と声をかけたそうです。
一人も反対してないんですよ。アカウントを自分たちの個人で払いなさいとか、そういうのを経営者が言っちゃったら、えーってなっちゃうけど
最初の3か月はスキルを磨き、そのあと各事業部へ
その3か月間はスキルを磨くところ。スキルを磨きながら、今度は目標を設定しながら、各事業部で工程表だとか事業計画だとか、土地を探すAIを使った検索システムを作ったり、ということをやり始めて
経営者が知らないまま号令をかけると、うまくいかない
経営者が知らないまんま、それ本当できるの?みたいな感じでやってしまうと、みんなもどうせ社長アカウント1個で全員で使えって言うんだろうな、みたいな感じになってくるわけですよ
及川様は、SHO-SAN代表の髙谷のプレゼンを聞いて、AIの未来が想像をはるかに超えて開けたと振り返ります。
経営者がやっぱりみんなを引っ張っていくのが、このAI推進のポイントになるんじゃないかなと思います
聞き手は、多くの住宅会社を支援してきた経験から、次のように話しました。
社長自身が楽しんで触られている会社さんは、本当に進み方が早いなと思いますし、浸透速度も早いなと思います
経営者はAIをどう使えばいいのか。決算書の分析と、「秘書」のような壁打ち
及川様がすすめる経営者のAI活用は、決算書をAIに入れて自社の改善点を客観的に挙げさせることと、将来の組織づくりを壁打ちすることです。専務からは、社長がAIを触ってから変わり、私の仕事が減ったという声が出ている、と話します。
決算書をAIに入れて、客観的に改善点を挙げてもらう
及川様は、経営者にまず触ってほしいのは、難しい案件だと話します。住宅会社の経営者には、そうした案件が不得意な人が多いといいます。
そんなのもう決算書をポンと入れてね、うちが改善しなきゃいけないところを上げてって、これ客観的にって言ってください
そうしたら出てくるから傷つくんですけど、これ。傷つくけど、そこに蓋をしちゃったらね、やっぱりあんまり良い方向に行かないんですよ
金融機関への決算報告会の前にも
及川様は、金融機関向けの決算報告会の前にも、AIに「銀行用に良いところと悪いところを出して」と頼みます。自社の数字を自分で把握していることが、銀行との話にも生きるといいます。
銀行も同じ目線で見てるわけですよ。私がそれを分かってるっていうことが、銀行にとっては大事なんですよ
「100億円になるには、どんな組織がいいか」も聞いてみる
自分が自分の会社の数字を理解することと、そしてここから100億円になるためには、どういうふうな組織を作っていった方がいい?って聞いてみてください。これはもう厳しく言ってって言った方がいいですよ
聞き手は、分析と、会社を将来どう持っていくかの壁打ちを、普通にされているのだと受け止めています。及川様は、専務の言葉を次のように紹介しました。
社長がAIを触ってから変わったと。私の仕事が減ったんだから、と。だから、すごい秘書がいるような感じだよねって言って
AIを導入して半年、会社は何が変わったか。「全社員の資料が変わりました」
及川様が挙げた最大の変化は、全社員の資料が変わったことです。毎週月曜の報告会議で発表する責任者がAIを使うようになり、資料のレベルが上がって、作成の時間も短くなった、と見ています。
もうシンプルです。全社員の資料が変わりました。やっぱりレベルが高いです
月曜日に必ずうちは報告会議をやるわけですよ。そこで発表する責任者は、AIを使っているから、時間が本当に短縮できたんじゃないですかね
AIで資料を作ると、品質は下がるのか
聞き手が、AIで資料を作ると品質が下がると思っている方もいるのでは、と尋ねると、及川様はきっぱり否定したうえで、条件を挙げました。
全然そんなことない。これはね、使う側が賢くないとダメ。何を伝えたいか分からないで、ぐちゃぐちゃの資料になっちゃうこともあるんですよ。詰め込んじゃうから
自分のことを覚えさせたAIが、自分になり代わって下書きをつくる
このChatGPTやGensparkに、私のことや私の会社のこと、いろんなメールのことをどんどん入れてるから、返してくるのが私になり代わって返してくれるわけですよ
及川様は、これを「ポイント的に社員向けに作って」と頼むと、すぐに出てくると話します。
今日朝何話そうかなと思って、1週間振り返った時にここだなと思いながら、ポイントを1つ決めて、20分くらいのメッセージをするんですけど
AI導入でつまずいたことは何か。ツールの切り替えが、社内に浸透する前に進んだ件
セイズでは、設計の担当者が、各部門に紐づく工程表を作り直しました。ところが、全社に浸透する前に従来のものを終了して新しい方に切り替えたため、「聞いていない」という声が出ました。及川様は元に戻さず、説得して前に進めています。
工程表が全部に紐づいていた
設計の工程表は、用地仕入れ・営業・工程のすべてに紐づいています。設計の担当者は、こうした作業に特化して優秀だと、及川様は評価しています。その担当者が自分で作った工程表を「これが最高だ」と考えて導入しました。
それが浸透する前に、使ってたものをサービス終了って言って、そっちを使い始めて、みんな聞いてないよねってなっちゃったんですよ。ちょっと移行が早すぎた
戻さず、説得して進める
収録の前の週の月曜日の会議で、「社長、どんなもんなのかなこれ」という声が出ました。及川様の答えは、戻さずに進める、というものでした。
先週の月曜日の会議で、社長どんなもんなのかなこれって言うから、もうこれでいこうよ、戻してもしょうがないから、と。ここはもう説得
みんな部門長たちも大人だから、彼がやっている能力の高さは分かっているので。でももうちょっとスムーズに切り替えてほしかったなみたいな、役員会議の話があって
最後は「もうやろう」とまとまりました。
「AIの前に、社員教育が必要」
いざこざが起きるようになったら、AIの前に社員教育が必要なんですよ
聞き手は、及川様が積み上げてきた組織基盤があってこそ、AIの導入がより力を持つのだと見ています。
多分社長が積み上げてきた組織があるからこそ、そこをしっかりと耐えていけるというか、土壌があるんじゃないかな
正しいことなんで。否定的な感情で誰かが入ってくると、AIをやるとおかしくなっちゃうんですよ。前のが良かったとかじゃなくて、もうやるって決めてるんだから
やるって決めてるんだから、もう諦めずにやると。できないところは改善していこう
及川様は、そこは乗り越えていきましょう、というメッセージを社員に出しています。
社長は毎日、AIをどう使っているのか。メールの返信、インタビューの下準備、商品づくりの壁打ち
及川様は、断りのメールの返信から、このインタビューの質問の下準備、高性能住宅の商品づくりの壁打ちまで、毎日AIを使っています。AIに会社と経営者自身のことを覚えさせてから半年、便利になったと話します。
難しいメールやLINEの返信を、丁寧な文章に
及川様は、すごく大事な方から来たメールへの返信や、お断りのメールにAIを使っています。LINEで来た連絡にも、「本当に丁寧にやってほしい」と指示して、返信を作ります。聞き手も、意思ははっきり伝えたいけれど失礼にならないように、という難しい文章の塩梅を取りたいときに、AIに頼むと良い文章を書いてくれる、と同じ使い方を挙げています。
私、文章能力ないから、素晴らしい文章で返してくれるんですよ。これなら大丈夫だなと思って
このインタビューの質問も、AIに入れてみた
及川様は、このインタビューについても、質問の本当の意図を汲み取りたくて、AIに入れてみました。自分の考えとAIの答えにどのくらいのギャップがあるのかを確かめたところ、次のような結果でした。
それを私の考えと、AIではどれくらいギャップがあるのかなと思って。それで入れてみて、そしたらギャップほぼないんですよね。むしろ丁寧にAIの方が答えてくれて
うちの会社のことと、経営者及川達也がどういう人間かということを、認識させるところから始めて半年じゃないですか。だから非常に便利ですよ
壁打ちから、住宅の新しい商品づくりが動き出した
及川様は、高性能住宅が今後どの方向に行くのかをAIと壁打ちする中で、「レジリエンス」という言葉が自分の中から出てきた、と話します。セイズの商品は、太陽光と蓄電池を標準で搭載しています。停電時に自然に非常用の電源として働く住宅を、今年商品化しようと動き始めました。
非常用の「特定負荷型」は、蓄電池から冷蔵庫、エアコン1台、テレビなど、特定の機器にしか電気を出せません。「全負荷型」は全部屋に電気を送れますが、まだコストがかかる、と及川様は説明します。壁打ちでは、最高レベルの高性能住宅を作っているセイズには、全負荷型が一番合うという答えが返ってきたそうです。
そういうことも含めて最高レベルなものを作っているので、とっても効果的で、一番合いますよって来るわけですよ
「よし、これを売ろう」と営業に話したところ、返ってきたのは次の言葉でした。
営業たちはなんと、社長私たちもそれ待ってました。コスト上がってもいいかって言ったら、いやそれじゃないとうちの良さが出ないということで
会社と経営者を知るAIが、判断と壁打ちの質を変える
聞き手が、ChatGPTやClaudeが自然に記憶していくので、社長をよく知るAIがこの半年でできて、経営の判断や壁打ちの質も変わるのでは、と尋ねると、及川様は「変わります」と即答しました。自己紹介文の例も挙げています。
自己紹介文なんて書こうかなと思うじゃないですか。だけどうちの自己紹介文を簡単に1分2分程度のもので書いてくださいって言うと、パーンと要約されて出てくる
聞き手は、思いを形にする、意思決定をする、という経営者の仕事に、会社のことを覚え込ませたAIを使う方法は、多くの住宅会社の参考になると話しました。
まとめ
- 経営者が先にAIを触る。及川様は興味本位で始め、講演資料づくりで手応えをつかみました。会社全体でやらないと効果がないと考え、全社で始めています。社長が理解していないと、号令だけでは社員はついてこない、と話します
- AIの前に、会社のゴールを決める。セイズは2030年に100億円というゴールを掲げ、費用を気にせず使って試す方針と、最初の3か月でスキルを磨く期間を設けて、各事業部の実務へ広げました
- 半年で「全社員の資料が変わった」。ツールの切り替えが浸透前に進むつまずきもありましたが、及川様は元に戻さず、「やるって決めてるんだからやる」「できないところは改善していこう」と社員に伝え続けています
社長が先に触り、ゴールを決め、決めたらやり切る。セイズの半年は、そこから始まっています。


