事例インタビュー
競合がフォトリアルなパースを出したら「プランの良し悪し関係なしに負けちゃうんじゃないか」。岐阜の工務店社長が、社員をAIブートキャンプに送った理由

株式会社大幸住宅可児工房(岐阜県可児市)のAIブートキャンプ(社員研修)会場
岐阜県の各務原市と可児市で住宅会社を営む大幸住宅の社長は、Geminiでパースをフォトリアルに加工する動画を見て、「一発でプランの良し悪し関係なしに負けちゃうんじゃないか」と危機感を抱き、自らAIブートキャンプに参加しました。その後、社員にも2日間の研修を受けてもらい、パソコンが苦手な営業部長の山口様が、Claudeで「住宅補助金診断」と「他社分析レポート」を作りました。社長には研修を決めた理由と生産性の目標を伺いました。山口様には研修後の変化を伺いました。
- 社長がAIに本気になったきっかけは、Geminiでパースをフォトリアルに加工する動画を見て、「すごい」以上に「怖い」「まずい」と感じたこと。ITの延長ではなく、AIはやっておかないと生きていけないと直感し、自らAIブートキャンプに参加しました
- 社長の目標は、1人あたりの生産性を今の約6000万円から、近々最低でも1億円まで上げること。件数を増やすために人を増やしてきた建築の在り方を、AIで変えたいと話します
- パソコンが苦手な営業部長の山口様が、2日間の研修で「住宅補助金診断」と「他社分析レポート」を作成。補助金を着工後に使えないと分かってお客様に迷惑をかけるトラブルを、商談の時点で防ぐ狙いです
前のAIブートキャンプでClaudeを初めて触ってから、ほぼ毎日使っており、考え事をまとめるのにも便利だと畑佐社長は話しています
自分で作業しながら横でAIを立ち上げ、AIが動いている間に別の作業を進めて、2つのことが同時にやれるようになったと話しています
営業部長の山口様は、研修で「住宅補助金診断」と「他社分析レポート」の2つを、未経験の状態から作成したと話しています
インタビュー動画
岐阜で2つの会社を営む大幸住宅は、どんな会社か。各務原市の会社が53年目、可児市の会社が28年目
大幸住宅の社長は、岐阜県各務原市の会社が53年目、可児市の会社が28年目という、2つの会社を営む住宅会社の経営者です。聞き手(SHO-SAN)が、社長と、AIブートキャンプを受けた営業部長の山口様に、研修の目的と変化を伺いました。
会社が2つありまして、岐阜県の各務原市にある会社の方が53年目ですね。可児市の方にある会社が28年目という経歴になっています
工務店の社長がAIに本気になった一番のきっかけは何か。Geminiで加工されたパースを見たときの危機感
きっかけは、Build AI Academy(BAA)の動画で、Geminiを使ってパースをフォトリアルに加工するのを見て、「すごい」ということ以上に「怖い」「まずい」と感じたことでした。社長は、競合がフォトリアルなパースを出してきたら、プランに関係なく負けてしまうのではと危機感を抱きました。

「僕はアナログでもいい」。でも社員には、知識を入れておかなければ
もともとアナログで、AIとは無縁のまま仕事が終わっていくのかなと思っていた社長は、AIという言葉をよく聞くようになり、Build AI Academyに少し興味を持ちました。
僕はアナログでもいいけれど、社員の子たちは少しそういったところに知識を入れておかなきゃいけないな、というところから始まりました
「怖い」「まずい」。競合が出すフォトリアルなパースに、一発で負けるかもしれない
Build AI Academyでは、いろいろな動画が上がっていました。そのなかの1本が、社長にとって衝撃的だったといいます。
Geminiを使ってパースをフォトリアルに加工するのを見たときに、すごいなということ以上に、怖いなというか、いやまずいなというのをすごく感じました
自分たちがそこを知らずに今までのようなパースを出していたら、と社長は想像しました。
別の競合会社が普通にフォトリアルな、実写に近いものを出してきたら、一発でプランの良し悪し関係なしに負けちゃうんじゃないか
私たちだけがそこについていけないのは、もう死活問題だなと。AIはもうやっておかないと、これから生きていけない気がしたんです
決め手は、社長自身が参加したAIブートキャンプ
直感的に感じて、たまたまAIブートキャンプがあるぞというところで、参加させてもらったのが、一番スイッチが切り替わるきっかけでしたね
社長は、自分が受けたブートキャンプに続いて、社員にも研修を受けてもらうことにしました。
AI研修で、社員にどうなってほしいのか。1人あたりの生産性を6000万円から1億円へ
社長の目標は、現在約6000万円という1人あたりの生産性を、近々最低でも1億円まで上げることです。件数を増やすには人を増やすしかなかった建築の在り方を、AIで変えたいと考えています。
お客様のほうが、AIで加工して提案を持ってくる時代に
パースは社員自身でも作れるようになってきましたが、それもどんどん当たり前になっていく、と社長は言います。
お客様のほうがAI加工しながら、例えばカーテンをはめ込んでみたり、ここにこういう棚を作ったらどうでしょうかと、ChatGPTで作って持ってこられる
そうしたなかで、社員の取り組みがお客様にとって満足度の高い提案になっているかが大事だ、と社長は考えています。聞き手(SHO-SAN)も、お客様が「この提案って本当に合っている」とAIに聞いて持ってくる時代になるかもしれない、と応じました。
AIの危機感というか恐怖というものを、今の段階から持っておくのは、結構大切なことですよね
「件数を増やそうと思ったら、人数を入れていかなきゃいけない」。その繰り返しを変えたい
件数を増やそうと思ったら、人数を入れていかなきゃいけない。これをずっと繰り返してきた
その繰り返しを、AIが建築の今までの在り方を変えるきっかけになる気がする、と社長は話します。
今、1人あたりの生産性が6000万円ぐらいなんですけど、最低でも近々1億円ぐらいまでは上げていきたいと思っています
そうしていかないと、社員の子たちの給料も上げていけないし、生き残っていける形にならない気がします
求めるのは、AIが使えるようになることだけでなく、業務をどう改善できるか
自分たちがそれを活かしながら、自分たちの業務をどう改善していけるか。時間を短縮して他のことに回して、お客様へのサービスを向上していけるか
PCが苦手な営業担当は、2日間のAI研修でどう変わったのか
研修を受けた営業部長の山口様は、研修前はAIを「プライベートでちょっと使うぐらい」で、パソコンも得意ではありませんでした。2日間の研修を終えた今は、抵抗感は残るものの、研修前に比べればハードルが下がったと話します。
研修前:AIは「使えると言えるものではない」
AIは本当にプライベートでちょっと使うぐらいで、使えると言えるものではないです
(抵抗感は)あります。パソコンとか触るのが得意じゃないので
営業の仕事で、AIに助けてほしかったこと
営業部長の山口様が、AIに助けてほしいこととして挙げたのは、次の3つです。
- お客様の「宿題」(法的なことや性能面のこと)に、見て分かる資料で答えること
- 見積もりの作成
- メールの文章
法的なことや性能面のことを、言葉で説明するだけでなく資料にして見せられるよう、AIに助けてもらいたいと山口様は話します。
お客さんが見て本当に分かりやすい資料を作れたらいいなと思います
研修後:「ここまでできるんだ」と、びっくりした
まだ多少は抵抗はありますけど、このキャンプをやる前に比べれば、ちょっとハードルが下がったかなと思います
2日間で一番「すごい」と感じた瞬間を聞かれた山口様は、自分で資料を作れたときだと答えました。
自分で資料が作成できたときです。その資料が精度が高いなと思って、ここまでできるんだっていうのは、ちょっとびっくりしました
営業担当が作った「住宅補助金診断」は、どんなものか。着工後に補助金が使えないトラブルを防ぐ
営業部長の山口様が作ったひとつ目は、建築地・子どもの人数・子どもの年齢・お施主様の年齢を入れると、使える補助金がわかる「住宅補助金診断」です。未経験の状態から、2日間の研修で作りました。
仕組み:岐阜県と愛知県の補助金をClaudeに読み込ませる
- 岐阜県と愛知県の補助金を、Webで事前に検索しておく
- その内容をClaudeに読み込ませる
- お客様の建築地・子どもの人数・子どもの年齢・お施主様の年齢を入力する
- 使える補助金が診断結果として出る
収録では、岐阜県内の建築地、子ども1人(5歳)、お施主様35歳という条件で診断し、使える補助金が表示される様子が紹介されました。
作った理由:お客様に迷惑をかけない。商談の時点で把握する
建築の途中で、社員の知らない補助金について、お客様から聞かれることがあります。
着工していると、もうその補助金が使えないこともあって、お客さんに迷惑をかけてしまうこともあります
あらかじめ商談の時点で把握できていれば、そういったトラブルを少なくできるんじゃないかと思って、作りました
他社さんと比較検討しているお客さんには、『こういう補助金がありますよ』と提案されたほうが、会社の信頼感にもつながりますし
競合と自社を比べる「他社分析レポート」では、何が分かるのか
ふたつ目は、よく競合になる工務店と自社を比べた「他社分析レポート」です。他社のホームページを見ても自社との比較はいまいち分からなかったが、比較表にしたことで、自社の強みと弱みが一目で分かるようになった、と山口様は話します。
一覧にすることで、うちが何に劣っていて、どこが優れているかが、すごく分かりやすいなと思いました
レポートに入っている項目
- 会社の規模・実績
- 価格・性能の比較
- イベント集客の頻度
- 自社の強み・弱みの分析と、今後どういう対策をしていけばいいか
他社分析レポートは、作るのにどのくらい時間がかかるのか
聞き手(SHO-SAN)は、AIを使わずに作れば丸一日から二日かかるレベルのレポートだと投げかけ、「当然、今日は隣に先生はいたんですけど」と添えたうえで、1時間もかからなかったかと確かめました。
作るってなると、丸一日とか丸二日とかかかるレベルですもんね。…でもやっぱり1時間もかからないですよね
そうですね。慣れれば簡単に、もっと短縮して作れると思います
山口様は、こうしたものをこれからもどんどん作っていきたいと話しています。
AIが苦手な人は、どう始めればいいのか。PCが苦手な営業担当からのメッセージ
パソコンが苦手でも、AIが考えてくれたものを自分でチェックするだけでいい。PCが苦手な営業部長の山口様は、2日間の研修を終えて、同じ立場の人にそう勧めています。
山口様は、世代が自分たちぐらいか、それ以上の方は苦手意識があり、パソコンが苦手な人にはハードルが高いと思う、と認めたうえで、次のように話しました。
実際にやってみると、仕事量がすごいんです。全部考えてくれますし、あとはできたものを自分で間違っていないかチェックするぐらいでいい
ぜひAIは導入して、取り組んでいただければと思います
「明日から使えそうですか」と聞かれると、山口様は「もちろんです」と答えました。
研修を終えて、社長の変化と期待は何か。Claudeをほぼ毎日使うようになって
社長自身も、前のブートキャンプでClaudeを初めて触ってから、ほぼ毎日使っています。社員の発表を見て、学んだことが実践で使えるものになっていると感じています。
前に自分が参加したときより、やれることの幅が広がっていた
僕が参加したときより、より高度にやれることの幅が広がるような話を聞いて、実際にそれをみんなが作っていたのに、ちょっと驚きました
自分の作業と、AIに任せる作業を、同時に進められるようになった
前のキャンプのときにClaudeを初めて触るようになってから、ほぼ毎日触っていますね
社長は、考え事をまとめるのにも便利だと感じています。
自分でする作業と、横にAIを立ち上げて、こっちで投げかけて動いている間に、他の作業をする。2つのことが同時にやれるようになりました
実務に時間を取られ、先に取り組みたいことに手をかける時間がなかった社長にとって、AIは時間の使い方を変えました。
AIを使うことでそこにかける時間を短縮しながら進めることができるようになったのは、ものすごくありがたいですね
社員にも、もっといろいろなことをやってほしい
僕でもそれができるようになったので、他の社員の子だったら、もっといろんなことをやってくれるんじゃないかな
同じことの繰り返しにかけていた時間を他のことに向けることで、社員がやれることの幅が広がり、成長を実感できるようになる。社長はそう期待しています。
社員の発表は、型づくりではなく、自分たちの課題から
社員が発表した内容を聞いた感想を、社長は次のように話します。
自分たちが仕事をしていて課題に感じていること、ここを少しやりやすくしたいなというところを、スキルとして作っていた
このキャンプで学んだことが、実践で使えるものがまあまああるなということが、すごく良かったですね
まとめ
- 大幸住宅の社長は、Geminiでフォトリアルに加工されたパースを見て、競合に一発で負けるのではと危機感を抱き、自らAIブートキャンプに参加したうえで、社員にも2日間の研修を受けてもらいました
- 社長は、1人あたりの生産性を約6000万円から近々最低でも1億円に上げることを目標にしています。件数を増やすために人を増やす建築の在り方を、AIで変えたいと考えています
- パソコンが苦手な営業部長の山口様が、Claudeで「住宅補助金診断」と「他社分析レポート」を作成。補助金を着工後に使えないと分かるトラブルを、商談の時点で防ごうとしています
競合に負けない提案を、社員が自分の仕事の課題から作る。大幸住宅のAI研修は、社長の「怖い」という直感から始まっています。


